東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 341回定期演奏会
photo credit: Hiroyuki Tsuruno

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 341回定期演奏会

2021年3月26日(金)サントリーホールにて開催、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 341回定期演奏会の公演記録とレビュー/コメントのアーカイブページです。

公演日(初日) 2021年3月26日(金) 19時00分開演
会場 サントリーホール
出演 指揮:高関健
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
演目 モーツァルト:交響曲第31番 ニ長調 K. 297 「パリ」
ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 ハ短調 Op. 65
参照サイト
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団公式サイト。コンサートスケジュールやチケット購入案内、指揮者、団員、楽団の活動情報などを紹介しています。
www.cityphil.jp

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耳澄

私はショスタコーヴィチを熱烈に愛する者ではないのですが、8番交響曲は15番と並んで大好きな曲のひとつです。
この8番は2010年12月のデュトワ&N響の熾烈な演奏が忘れがたいもので、強い印象がまだ脳裏に残っているだけに、今回の高関&東京シティフィルの演奏会は大きな期待はもちろんのこと若干の不安ももたげながら会場へ向かいました。

前半はモーツァルトのパリ交響曲。モーツァルトの楽曲では最大級の編成による豊かなオーケストレーションを使った野心的な作曲を楽しんでほしいと高関氏の解説。
この交響曲は複雑な作曲過程と複数稿があり私もやや混乱した認識がありましたが、当夜は第2稿による1楽章と第1稿による2楽章というモーツァルト自身も採用したバージョンによるものでした。
当夜は控えめなビブラートに硬いバチによるTimp以外はさほどHIPを強調せず、過度なコントラストも避けて(3楽章のpとfの対比も大人しい)、思った以上にふくよかな響きによるモーツァルト。高関氏の言う野心性は正直あまり感じるものではありませんでした。

さてメインのショスタコーヴィチ8番交響曲。
冒頭のしっかり弦に食い込んだVcとCbの主題その緊張と気合に漲った音楽を聴いて、この演奏の素晴らしさは保証されたと妙な安堵が頭によぎりました。
1楽章中間部の切迫した危機感における暴力的な音の塊、そして不安と平穏が入り交じるコーダの静謐さの対比の凄み。
3楽章のマシン化したVa、それに合いの手を打つVcの強烈な楔、金切り声をあげる木管。スコア以上の強迫的な音像に思わず手を握るのですが、バルトークピチカートのCbとTimpがつける強烈な打撃と無窮動的な運動を引き継ぐTbの凄みある音!これは圧巻でした。
4楽章のパッサカリアでは低弦の主題にのる2ndVnのノンビブラートの虚ろな音で奏でられる対旋律の恐ろしさ!
フィナーレがパロディックで殊更に陽気なfgの主題が却って不安を感じるように、中間部の1楽章の危機感の強烈な再現(大太鼓のクレッシェンドの果ての強烈な打撃はマーラー10番を想起させるような強迫)
そしてそこからハ長調のコードによるほのかな希望のコーダの美しさ。

当夜はフィナーレ後半でVcトップの長明氏の弦が切れるというハプニングがあり、それも直後にVcのソロ!があるという中、高関氏の冷静で機転の利いた判断で音楽の休止タイミングに合わせて音楽を一旦止め、代替のVcを得た長明氏を確認してから音楽を始めて難なくソロを迎えられるという見事な采配。
災い転じて福となす。この危機的な緊張感が最後のコーダに向けての集中力の起爆剤となったように思えました。

当夜はデュトワの呪縛から解き放たれて凄絶な演奏を堪能ができ、しばし呆然でした。

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