群馬交響楽団 第574回定期演奏会
©公益財団法人 群馬交響楽団

群馬交響楽団 第574回定期演奏会

2022年1月22日(土)高崎芸術劇場大劇場にて開催、群馬交響楽団 第574回定期演奏会の公演記録とレビュー/コメントのアーカイブページです。

公演日(初日) 2022年1月22日(土)  16時00分開演
会場 高崎芸術劇場大劇場
出演 指揮:広上淳一
管弦楽:群馬交響楽団
演目 ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調 WAB108(ハース版)  
参照サイト http://www.gunkyo.com/concert-list/%E7%AC%AC574%E5%9B%9E%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E6%BC%94%E5%A5%8F%E4%BC%9A/

この公演に行きましたか?

インラインコメント

レビュー以外のコメントも大歓迎!緑のアイコンをクリックしてお寄せください➤
0
コメントをどうぞx

5 1 件の評価
この公演の評価
ウォッチする
通知
guest
レビューを投稿する前に確認してほしいことです

1 レビュー
古い順
新しい順 最高評価
コメント数
すべて表示
さすらう若人

2022年1月22日(土)高崎芸術劇場で群馬交響楽団第574回定期演奏会
指揮は広上淳一、曲目はブルックナー交響曲第8番(ハース版)。

2020年6月公演が新型コロナウイルスの影響で延期となり、ようやく実現した本演奏会。
広上マエストロがどのようなブルックナーを演奏するのかはほとんど知られておらず、それなりに注目を浴びていた演奏会であったと思う。

まず、何よりも特筆しておきたいのは、ホルン部隊の大活躍である。
1stに濵地宗首席、5thに竹村淳司首席(ワーグナー・テューバ持ち替え)を配した群響ホルン隊は、重厚感があり遠くまで響く、ブルックナーが描いたホルンの音型として大変理想的なものであった。
思えば、濵地首席が群響に来てからホルンのレヴェルは著しく刷新された。先日氏がリリースしたモーツァルト:ホルン協奏曲然り、地方のオーケストラにこのような素晴らしい奏者が在席し、日頃からその演奏に接することができることは非常に幸せなことだと熟感じる。
また、今回は「ブル8」という大編成曲にあって楽団員も勢揃い。木管3番に―Ob:高﨑・Cl:西川・Fg:奈波さんといったように―普段であれば1番を吹くはずの首席が乗っており、豪華な様相で挑む演奏であった。
群響の演奏は重量感も技術も非常に満足のいくものであったが、願わくば、トランペットの音量がもう少し欲しい。ホルンがあそこまで充実した音だと、どうしても引け目を感じてしまうのである。曲のタテ構造を考えた際にもう少し明確に音が浮かび上がってきてほしいと感じる箇所が間々あった。逆に音量を感じる際にも破裂音が煩わしくベクトルの違いを感じることもあった。やはり、ブルックナーにはロータリー・トランペットで挑んでほしい(上記の注文になおかつこの注文は非常に酷だということは承知している)。
あと1点は弦、特にヴァイオリンが薄い。もう少し弦の厚みがないとブルックナー特有のうねりを伴うドライヴ感・陶酔感が現出してこない。これは今回の演奏に限らずこのオケが抱える課題だと思うので、今後のレヴェルアップに期待したい。

マエストロのブルックナー像は敬虔に神を崇めるようなものではなく、全体的には現実主義的に実直に進んでいく。そのなかには時にありのままの人間の苦悩を表現した、もっと言えばマエストロに人類の苦しみが憑依したかのような印象を受けた。それが最も突出していたのが第3楽章だ。ブルックナーの緩徐楽章の中で最も美しいこのムーブメントにそうした視角から挑んだ演奏はこれまでそう多くはないのではないだろうか。マエストロが背負う共苦がフィナーレで昇華されて天に召されていくようなストーリーも、これまで正面から取り上げられることのなかったアプローチの一つであるようにも思えた。しかしながら―あくまで私見ではあるが―少しやりすぎ感も否めない。第3楽章は胃もたれのするような粘り気の強さとマエストロのアクションとで正直辟易させられた。あからさまにテンポがコロコロと変わるのにも(たしかにスコアに指示があるものも含まれるが、、)違和感を感じた。第4楽章コーダ部もさすがにあそこまでテンポを落とした進行だと、これまでの営みとはアンバランスさがあるようにも思える。
とはいえ、この演奏が感動的なものであったことには揺るぎない。もう一つだけ書き残しておきたいのは残響の絶妙さ。例えば、第2楽章トリオのラストでフルートだけ若干終止を遅らせることによって、甘美な音な佇まいを観客に植えつけるように。そのような効果は作為的に感じさせないマエストロの采配に依るものであろうが、それはまたこのホールが群響に適していることも無関係とは思えない。群響の本拠地がこのホールになってからここでブルックナーを聴くのは初めてであったが、このホールは群響のよく抜けて重量感のある響きに相応しい空間だとあらためて感じる。そして今回はそれがなお相互作用していたようにも思える。

はじめに述べたように、今回は広上マエストロがどのようなブルックナー像を有しているのか、プログラムが発表された時から注目が集まっていた演奏会だったように思える。実際に関西方面からも熱いブルックナー・ファンが来場したようである。この演奏会に注目が集まり、結果として群響の演奏が如何なるものか知ってもらえたうえに、SNSでそれが周知されこのオケが脚光を浴びたのであれば、このオケの長年のファンとしてこれに勝る喜びはない。

カテゴリー

ジャンル

1
0
レビューを書いてみませんか?登録は不要です。x