東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第342回定期演奏会

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第342回定期演奏会

2021年6月16日(水)東京オペラシティコンサートホールにて開催、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第342回定期演奏会の公演記録とレビュー/コメントのアーカイブページです。

公演日(初日) 2021年6月16日(水)  19時00分開演
会場 東京オペラシティコンサートホール
出演 指揮:高関健
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
演目 ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調(原典版)  
参照サイト
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 オフィシャルサイト
www.cityphil.jp

この公演に行きましたか?

レビュー以外のコメントも大歓迎!緑のアイコンをクリックしてお寄せください➤
0
コメントをどうぞx

0 0 評価
この公演の評価
ウォッチする
通知
guest
レビューを投稿する前に確認してほしいことです

1 レビュー
古い順
新しい順 最高評価
コメント数
すべて表示
さすらう若人

2021年6月16日(水) 東京シティ・フィル第342回定期
高関健常任指揮者の指揮でブルックナー:交響曲第5番
会場は東京オペラシティ コンサートホール

日本にこれほどブルックナーを敬愛し、真摯に向き合う指揮者がおり、我々がそれを享受できることにひたすら感謝しながら拝聴した約80分。
筆者は高関マエストロのブルックナー、しかも偏愛する5番が聴けるということで早々にチケットを確保し、当日を楽しみにしていた。そういえば、高関マエストロも5番が一番好きと仰っていたような気がする。
実際、筆者を含めた観客の大部が感銘を受けたようで、終演後は客席50%とは思えない拍手、一般参賀も2回という盛況ぶりであった。

シティ・フィルがよく鳴ることを生かし、大きなスケールを演出する一方で、非常に細かい。頭のアクセントや符点を強調にはじまり(反対にエッジが立たないよう気遣う箇所も多々)、マエストロの非常に木目細やかな指示出しにより明晰な演奏となった。マクロな視点とミクロな視点を同時進行で示されていくようで大変説得力があり爽快。
作為的で無いのはいつも通りであるが、スコアに真っ正面から向かい合ったがゆえにハッとする場面もちらほら見かけられた。
例えば、第3楽章練習番号Aでアッチェレランドを目立たせたりする処理。一見ユニークに思われ、高関マエストロにしては珍しいと思ったが、あとでスコアを確かめてみると、実は作曲家の指示であった。この箇所はインテンポで演奏する指揮者が多いように思われ、そのような指示がされていたことは今回初めて知ったため新鮮に感じた。第1楽章練習番号Aの細かなクレッシェンドの動かし方も効果的。その他、前述のアクセントの多用も総譜と向き合った結果。特別奇をてらったことをしなくても、この曲自体の完成度が高いことに気づかされた。

全体をとおして興味深かったのがピッツィカートの処理。冒頭のピッツィカートからゆとりを持たせ非常に響かせていた。冒頭からここまではっきりと聴かせる指揮者は案外珍しいのでは。この曲は第1・2・4楽章でピッツィカートから開始するのが特徴的だが、いずれの楽章においてもその傾向が見受けられ、この曲の特徴を看取したマエストロのこだわりと受け取った。

なんと言っても、今回最も特筆すべきはフィナーレであろう。第4楽章の複雑なフーガの指揮、全てのパートに目配せしながら、順に頭出しをし、明瞭なハーモニーを確保していく高関マエストロの指揮姿は圧巻(特に練習番号Mから!)。あの微妙な音の出具合が重要であるはず。あそこで「堪える」からこそあの感動的なコーダが待っているのだ。

そして、今更ながらシティ・フィルとの相性が抜群であることを気づかされる。オケが鳴らしたいポイントで鳴らさせている、一見奏者側に委ねているようにも見えるが、実はマエストロの鳴らしたい箇所と奏者のそれとが合致するよう仕向けているのではないかと想像してみる。

ただ、実際には好みが分かれるような演奏であったようにも思える。とりわけ「ブルックナー」に拘りのある方には。 少なくとも90年代であれば評価されなかった演奏ではあるまいか。換言すれば、新たなブルックナー像が提示されている現場に立ち会えたと言うこともできよう。

というわけで、これほど素晴らしいブルックナーの5番はなかなか聴けないと思った次第。4楽章のコーダでは演奏が素晴らしいことに加え、偏愛するこの曲を尊敬する指揮者の演奏で聴くことができた喜びが合わさり、涙が溢れてきた。

ところでこれはあくまで余談だが、オペラシティコンサートホールは改修により、音が直接的に、少し太めに聴こえるようになった気がしたが、本当にそうなのか今回の演奏によりそう聴こえたかどうかは判断がつかない。

カテゴリー

ジャンル

1
0
レビューを書いてみませんか?登録は不要です。x