東京二期会オペラ劇場 ワーグナー作曲オペラ『パルジファル』全3幕
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東京二期会オペラ劇場 ワーグナー作曲オペラ『パルジファル』全3幕

2022年7月13日(水)東京文化会館にて開催、東京二期会オペラ劇場 ワーグナー作曲オペラ『パルジファル』全3幕の公演記録とレビュー/コメントのアーカイブページです。

公演日(初日) 2022年7月13日(水) 17時00分開演
会場 東京文化会館
出演 指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:宮本亞門

[7月13日(水)/16日(土)]
アムフォルタス:黒田博
ティトゥレル:大塚博章
グルネマンツ:加藤宏隆
パルジファル:福井敬
クリングゾル:門間信樹
クンドリ:田崎尚美
第1の聖杯の騎士:西岡慎介
第2の聖杯の騎士:杉浦隆大
4人の小姓:清野友香莉、郷家暁子、櫻井淳、伊藤潤
花の乙女たち:清野友香莉、梶田真未、鈴木麻里子、斉藤園子、郷家暁子、増田弥生
天上からの声:増田弥生


[7月14日(木)/17日(日)]
アムフォルタス:清水勇磨
ティトゥレル:清水宏樹
グルネマンツ:山下浩司
パルジファル:伊藤達人
クリングゾル:友清崇
クンドリ:橋爪ゆか
第1の聖杯の騎士:新海康仁
第2の聖杯の騎士:狩野賢一
4人の小姓:宮地江奈、川合ひとみ、高柳圭、相山潤平
花の乙女たち:宮地江奈、松永知史、杉山由紀、雨笠佳奈、川合ひとみ、小林紗季子
天上からの声:小林紗季子

合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
演目 ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」
全3幕<日本語および英語字幕付き原語(ドイツ語)上演>




公演日程/
2022年7月13日(水)17:00
2022年7月14日(木)14:00
2022年7月16日(土)14:00
2022年7月17日(日)14:00
参照サイト
https://www.t-bunka.jp/stage/15724/

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さすらう若人

二期会創立70周年記念公演はワーグナーの舞台神聖祝典劇《パルジファル》
指揮はセバスティアン・ヴァイグレ、ピットに入ったのは彼が首席指揮者を務める読売日本交響楽団。演出は宮本亞門が務めた。
筆者は7月13日(水)のプレミエ公演を鑑賞した。
終演後、最初に抱いた感想を述べるとーこれはもっぱらいい意味でだがー、《パルジファル》を聴き込んでいる人は批判したくなるような、そして苦手な人はもっと苦手になりそうな公演だった。前者は主に演奏の面で、後者は主に演出の面で。
ヴァイグレはやはり歌劇場の指揮者なのだと思う。そしてそのような指揮者とタッグを組むには国内ではやはり読響を措いて他にいないであろう。決して綺羅びやかな演奏を披露してくれるわけではないのが(かと言って無味乾燥なわけではない)、歌劇場で培った経験、時には勘も使いながら緻密に作品を構築しているスタイルにはやはり惹かれるものがある。
ヴァイグレの筆運びは極めて自然なものであった。後述のとおり速度こそ“速かった”かもしれないが、ほとんどの演奏では拾われることのないライト・モティーフまでも丁寧に鳴らし、これまで取り留めの無いと思われていた場面にもスポットを照らす、舞台音楽としては大変啓示的だったといえる。またここぞいう所でヴァイグレがオケをかき回していたが、緊迫感を醸し出すのによく効いていた。ただでさえ難曲であるのに、特に弦を中心に彼の棒に喰らえつくのは苦労したかもしれない。
ただワーグナーにはもう少し重層的な音の密度が欲しい。ワーグナー特有の、音楽が鳴っているときの昂揚感が物足りなかった。それがワーグナーを実演で聴く醍醐味であるのだから。そして読響はそれができるオケであるのに。開演前のファンファーレで好調だった金管も所々でケアレスミスを重ねたが、速度と音量が上がると緊迫感を醸し出したように思える。もっとも日本人歌手の声量に合わせてボリュームを多少絞った可能性も否めなく、オケのみの箇所は伸びやかに演奏されていたとも思う。
ところで、前日から演奏時間のことが取りだたされ話題になっていた。たしかに特に第1幕は約90分と時計でみると“速い”のだが、繰り返しになるが、ヴァイグレの音楽運びは極めて自然でさほど体感的に速いと感じることはなかった。ただ、舞台転換と幕切れは―日頃からブーレーズに慣れ親しんでいる身であっても―たしかに速い。ある種の21世紀のワーグナー演奏なのだろうが、そうした意味では「舞台神聖祝典劇」というものからは程遠い演奏であったと言わなければならない。恐らくクナッパーツブッシュを好んで聴いているような聴衆―もっとも筆者も決定盤にはこれを挙げたいが―は違和感を覚えたに違いない。

歌手陣では田崎尚美演じるクンドリーが3幕とも飛び向けて好演だった。ワーグナーの歌劇においてあれだけのドラマティックな歌唱を披露できるのは頼もしい。個人的には悪役としての威厳を有する門間信樹演のクリングゾルとの掛け合いに聴き惚れた。アムフォルタスを演じたベテランの黒田博は歌唱・演技共に痛みと自らの立場に苦悩する王を演じきった。題名役の福井敬はさすが安定。グルネマンツの加藤宏隆は語り役として的確な正確で端正。やはり評判は良かったようだが、個人的にはもう少し声の伸びが欲しい。ワーグナーは初とのことなので今後に期待したい。また、花の乙女たち、それに二期会合唱団もよく揃い声圧もあり、聴き応えのあるものだった。

演出については、如何にも宮本亞門らしいアイディアが盛り込まれている。
投稿時点でまだ2公演残っているので過剰なネタバレは避けたいが、舞台を美術館としたうえで、登場人物に少年と母親を持ち込み、さらにオリジナルの登場人物とリンクしていくところまではとても面白かったのだが、その他にもいろいろと持ち込み過ぎて(とにかく舞台転換が盛り沢山で急かしない)、回収が不十分で粗雑さを感じた。この方のこれまでの演出は基本的には前後に現代的な視点を付け足すだけだから、本体には影響はなかったが、今回は本体にも手を加え始めた結果、チグハグさが否めない。この物語を大きなものとして捉えようとするあまり、映像を多用するのだが、それはむしろ安っぽさを強調するし、最後にクンドリが登場する件には思わず失笑してしまった。筆者個人的な趣味ではあるが壮麗な音楽が鳴っている箇所ではあまりいろいろと見せつけないで欲しい。《パルジファル》を現代的演出として上演する意義は難解な宗教劇に如何に親和感を抱かせることができるかが醍醐味だと思うのだが如何だろうか。ところで、本作品はフランス国立ラン劇場との共同制作だが、当地の人々にはどのように受け止められたのだろうか。そしてこの作品に苦手意識のある聴衆にはどう映ったのだろうか。

このような理由から、筆者は終演後に冒頭に述べた感想を抱いたのだと思う。とはいえ《パルジファル》は滅多に演奏されるものではなく、二期会が取り上げるのは10年ぶり。舞台上演はこれで8回目らしい。創立70年記念に《パルジファル》を配した二期会には心からの感謝を述べたい。そして今回の上演に少しでも興味を抱いている方には是非公演に行ってほしい。

さすらう若人により、2 ヶ月間 前に最終更新されました

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