読売日本交響楽団 第617回定期演奏会
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読売日本交響楽団 第617回定期演奏会

2022年5月24日(火)サントリーホールにて開催、読売日本交響楽団 第617回定期演奏会の公演記録とレビュー/コメントのアーカイブページです。

公演日(初日) 2022年5月24日(火) 19時00分開演
会場 サントリーホール
出演 指揮:上岡敏之
ソプラノ:森谷真理
ボーイソプラノ:TOKYO FM 少年合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
演目 ウェーベルン : 6つの小品 作品6(1928年版)
ベルク:歌劇「ヴォツェック」から3つの断章
ツェムリンスキー:交響詩「人魚姫」
参照サイト
読売日本交響楽団の公式サイト。公演プログラム、指揮者・楽団員リスト、マエストロからのメッセージ、会員募集、当日券情報など
yomikyo.or.jp

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すぎだま🐔クラレビの中の人

新ウィーン楽派づくしの演奏会。これまでだったら興味すら示さなかったジャンルでしたが、家人の強力な協力wで意を決して足を運びました。

上岡のことは恥ずかしながら全く存じ上げすで、それでも新日を”追われた”感のある退陣の方というくらいで、ヨーロッパを中心に歌劇場で活躍されていたことすら知りませんでした。

平日ということもあるかもしれませんが、やはり客の入りはよろしくなく半分程度でしょうか。

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さて今回は、曲を追うごとに後期ロマン派的調性と感情が濃くなっていくプログラムでした。
予習初期の段階では、シュトラウスやワーグナーのような雰囲気のある『人魚姫』がお気に入りでしたが、次第に『ヴォツェック』に惹かれるようになりました。
ウェーベルンについては申し訳ない程度の聴き込みしかしておらず、曲も短いしそれほど重きをおいていませんでした。

蓋を開けてみると、秀逸はウェーベルンでした。
上岡独特のくせのあるクネクネした棒振りには驚かされましたが、もっと驚いたのはオケの緊張感の高さでした。
それは、弱音と音の色の微妙なニュアンスを繊細に醸し出す、上岡とオケの呼吸にでした。

大太鼓が恐らく鳴っているのだろうけど、殆ど聞こえない最弱音の部分は、本当は鳴っていなくて自分の耳の中で自身の雑音が聞こえているのかも、と錯覚したほどでした。

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『ヴォツェック』はマリー役の森谷に期待をしたのですが、ステージ後方、下手側のティンパニと上手側のトロンボーンとの間、やや左寄りのP席壁の前で歌わせるやり方は、私はあまり良いと思いませんでした。

響きが良すぎるサントリーホールであの位置からソプラノ歌手の歌は、鳴りが良いオケに埋もれていたように聞こえます。
それでも第2曲の聖書を読みながらの罪を悔いる場面の感情の溢れは、大変聴き応えがありました。

さて今回の『ヴォツェック』で注目していたのは、第3曲の子どもたちをどうするのかというところでした。

チラシ等では、”ボーイソプラノ:TOKYO FM 少年合唱団”とあるのですが、マリーの子だけなのかそれとも一緒に遊んでいる子どもたちもなのか。

プログラムを見ると、第3曲の歌詞・セリフの対訳もあるし、6人の少年の顔写真までついていたので、しかしどこで歌うのかと、期待と不安でいっぱいでした。

森谷がしずしずと下がり、第3曲のあのマーラー的悲劇性が爆発する5場への場面展開のあと、子どもたちが並んでその場に入場。

少し芝居を混ぜながら立ち位置を変えつつ、セリフを歌いました。
はじめ気が付かなかったのですが、なんと日本語!

その瞬間、「やられた」と思いました。と同時に涙が溢れてしまったのです。

事前に、家人が作ってくれた、ヴォツェック全曲から断章で使われる箇所を字幕付きで解説してくれた動画を観ていたので、子どもたちのセリフやその場の意味、歌詞の意味を理解していた賜物です。

ほんとにわずかな長さの場ですが、正直、マリーの森谷の歌もオケの熱演も吹っ飛んでしまいました。

終曲は消え入るようにではなく、虚無な雰囲気の繰り返しの音をぶつっと切る突然の停止。拍手はすぐに起きず静寂が漂いました。

休憩後、なんと少年合唱団諸君が、私の席後方におるではないですか。最後まで聴いていくんですね。偉いです。ですので、サムズアップしていいねをしたところ、ぺこぺこと頭を下げてくれたのが可愛かったです。

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『人魚姫』は上岡が得意としていると聞いていたので、てっきり第2楽章はツェムリンスキーがカットした行方不明だったのち発見された全曲版で行くのかと思いきや、トリオカット版でした。

私の大好きな、第2楽章の出だし、盛大に広がっていく豪華なファンファーレなところがゴージャスで良かったのですが、それにしても上岡のパウゼは長い。
そのせいもあるのか、前半の緊張が休憩で緩んだのか、出だしの合わせが少しふらついたり、アンサンブルに乱れがあったように思えました。
加えて速度も遅めなので、特に第2楽章はやや冗長的に聴こえました。

ウェーベルンで打楽器をすべて下手側に寄せたり、ヴォツェックでバンダを使用したり、少年たちを出演させたり、工夫と創意が感じられるとても意欲的な演奏会でありました。

この公演のテーマ「死」と「魂の救済」。実はこの文句はプログラムにはみられません。プログラムは曲の解説、それも上辺なテキストしかなく、まったくけしからんレベルです。
集客を目的とするチラシのほうが、しかも裏面の内容のほうが良くできておりました。

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